2017年9月23日土曜日

西洋記63

第三十四回 爪哇国負固不賓 咬海干持強出陣

 逆に火計にあった謝文彬は、水に飛び込む。この計略は国王とは関係なく、謝文彬の妻が計ったことらしい。謝文彬は中国人である。情報を聞き出し、捕らえた兵を帰国させる。

 さらに西に向かって、およそ十昼夜、また一つの国に着き、水陸二軍に分けて陣を敷く。
 偵察により、そこは爪哇国とわかり、来歴詳細が語られる。

 咬海干が敵対する、以前逃げた謝文彬が知らせたものらしい。
 征西遊撃将軍の馬龍が敵の咬海干ら三人を相手に奮戦


第三十五回 大将軍連声三捷 咬海干連敗而逃

 敵の『入海擒龍咬海干』という旗号から、馬龍ではなく、唐英が咬海干と戦い、箭と標を打ち合い、唐英が口で標を止める。長引いたので咬海干がいったん退く。
 なぜ唐英なら勝てるのかと問われた天師は、敵は魚眼将軍、魚は鷹に食われるものだ、と説明する。(唐英の「英」と「鷹」の音がどちらもyīngで、同じため)
 翌日は、大都督の金天雷が出て、唐英、馬龍が埋伏。咬海干ら三人を相手にした金天雷は咬海干の標を三度両断し、かなわないとみて咬海干が逃げる。
 今度は海鰍船で近づいてきた咬海干に矢を射かける。咬海干は張柏が射た矢を二度つかみ止めるが、三本目を受けて逃げる。

 三日後、また咬海干が海鰍船で攻め寄せたのを、火計を用いて追い払う。
 国師が宝船に災いが近づいていると告げる。はたして敵が水にもぐって来て船に穴を開けようとしているとわかる。

2017年9月22日金曜日

西洋記62

第三十三回 宝船経過羅斛国 宝船計破謝文彬

 賓童龍国国王がそれぞれの由来と持つ力を語る。国王はさらに私的な贈り物をしたいと言ったが、元帥は一銭たりとも受けなかった。
 ここから金蓮宝象国までは陸路で3日、海路だと7、8日。海路のほうが時間がかかるのは、間に崑崙山があるから。それから小国があり、仏国。元帥が兵士による剣舞を見せると、10日ほど行くと水戦に慣れた国があると言う。

 宝船はそこを離れ、10日ほど行くと高い山があり、国があるようである。水軍陸軍に分けて陣を敷く。
 羅斛国の国王もそれを知って文武百官を集めて協議する。刺麻児など戦おうとする者もあるが、国王は父王の時代に白馬や着物をもらっており、昔からの縁を考えて話をするべきだと言い、様子を探ることになる。
 宝船を訪れた刺麻児に玉璽のありかを尋ね、ないなら通過させてくれと言う鄭和に、刺麻児は、すぐに国王の元に戻り、降参書と贈り物を進貢すると答える。
 すぐに使節が来るが、鄭和は疑う。羅斛国の東門から軍馬が現れ、一触即発となる。
 国王には戦う気が無かったが、部下が従わなかったのだということがわかり、鄭和は国王の降参書と贈り物を受ける。
 白象一対、白獅子二十匹、白鼠二十匹、白亀二十匹、羅斛香二箱、沈速香各二十箱、大風子十瓶、薔薇露二瓶、蘇木二十本

 そこを出ると追ってくる軍があり、謝文彬。謝文彬は赤壁の時のように苦肉の策で降参を装って宝船を焼こうとするが、見破られる。天師が術を使って風を起こし、敵船を翻弄する。

2017年5月16日火曜日

西洋記61

 すると突然知らせが入り、金蓮宝象国の三太子が父王が南朝に降参したのを怨み、兵をひきいて逃げたという。

 また進むと、海岸を駆けてくる一騎があり、金蓮宝象国の国王がこの先の小国・賓童国に、宝船が行ったら降参するように伝えたと知らせてきた。

 夜になって碇を下ろすと、夜半、左軍で人馬の物音がし、ときの声が上がる。左軍の征西副都督黄全彦がよろいを着けて現れ、賊船が来たと報告する。これは金蓮宝象国の三太子が三十名あまりで海賊となったものであった。
 鄭和が道理を説いて説きふせ、降参させる。

 しばらく行くと芝の生えた山があったので、芝を取りに行かせる。この山は頂上に滝があり、そこに石碑がある。石碑に書かれた言葉から、霊山と呼ばれている。
 元帥はあたりのことをたずね、また船を進める。

 5、6日進むと、山のふもとに着き、さらに一日行くとひとつの国に着いた。
 そこは賓童龍国で、国王が降参書を持ってきて、労なく降参させ、竜眼杯、鳳尾の扇、珊瑚の枕、奇南香といった宝物を手に入れる。

2017年5月3日水曜日

西洋記60

 宝母は、一つの美しい石で、毎月十五日の晩、これを海辺に置くと宝が集まってくるので宝母と言う。
 海鏡は中国の蚌蛤(ぼうこう、ハマグリ)に似ていて中に小さな赤い蟹がいる。海鏡が空腹になると蟹が外に出て食事をし、満腹して帰ると海鏡もまた満腹する。その殻が光を反射するので海鏡と言う。
 大火珠は直径一寸ほどの珠で、全体が火で、昼には香や紙に火をつけることができ(仮にこうしておく、原文燎香褻紙)、夜にこれを持っていれば前後を車千乗のところまで照らすことができるために大火珠と言う。
 澄水珠は、直径一寸ほどの美しい無傷の玉で、清水の中に入れると見えなくなり、濁った水の中に入れると水がたちまち澄むので澄水珠と言う。
 辟寒犀は犀牛の角で、金色で、金盤に乗せて広間の上に置いておけば暖気で暖かくなるので辟寒犀と言われるようになった。
 象牙の敷物は象牙を細い糸にして敷物に織ったもので、上で眠れば百病が除かれる。
 吉貝布の吉貝というのは柯樹(イタジイ)で、花期に細い緒を取って紡いで布にしたもので五色に染めるととても美しいので吉貝布と言う。
 奇南香は知っているが、白鶴香はという具合にすべての宝貝(ほうばい)についてたずねた後で、伝国の玉璽のことをたずねる。南朝の玉璽はこの国にはない、見つかったら隠さず返すと約束する。

 左丞相に続き、右丞相も黄金や白銀やさまざまな産物を献上する。
 元帥は産物や酒や文字や暦や刑罰や風習についてあれこれたずねる。
 記録させ、礼物を収め、宴会を開いた後、元帥は国王や丞相に、南朝の青磁や布などを贈り返す。
 翌日、国内をご案内しましょうと言われるが、元帥は、軍務中だからと断り、毎年進貢し、臣と称するように言う。
 論功行賞を行ってから、船を西に進める。

2017年5月1日月曜日

西洋記59

 姜金定はあわててもどり、国王に目通りする。姜金定はとうていかなわないので降伏するように進言する。左右の丞相は降書とともに宝貝(宝物)を進貢するべきだと言う。先に姜金定が沙彦章を送って行く。三宝太監が、沙彦章を叱咤し、後の功績で贖罪せよと言っていると、金蓮宝象国の左右の丞相が降参しに来る。降参書とともに宝貝の目録がある。

 載っていたのは、

 宝母一枚、海鏡一双、大火珠四枚、澄水珠十枚、辟寒犀二根、象牙の敷物二牀、吉貝布十匹、奇南香一箱、白鶴香一箱、千步草一箱、雞舌香一盤、海棗一盤、といった宝物であった。

 三宝太監は宝貝の目録を見て喜び、丞相に、これは本国の物かと尋ねる。丞相は本国の物だと答え、三宝太監はそのいちいちについて説明を求める。

2017年4月26日水曜日

西洋記58

第三十二回 金蓮宝象国服降 賓童龍国王納款

 張天師は五個の黄巾力士に頭を海の遠くに捨てさせる一方、姜金定を生けどりにする策を講じる。。
 姜金定が現れ、頭を探しに追いかけるのが報告され、天師が出馬、符を飛ばし、天将が姜金定を捉える。今度も、姜金丁は心服しないので、また放す。

 姜金定が去ってしばらくすると、赤い顔の力士が片手で頭、片手で脚を持ってきて、軍中に抛り出す。天師が「さっさと行け!」と言うと、またも姜金定は逃げる。
 が、すぐに青い顔の力士が片手で頭、片手で脚を持ってきて、軍中に抛り出す。天師が「さっさと行け!」と言うと、またも姜金定は逃げる。
 が、すぐに黒い顔の力士が片手で頭、片手で脚を持ってきて、軍中に抛り出す。天師が「さっさと行け!」と言うと、またも姜金定は逃げる。
 が、すぐに白い顔の力士が片手で頭、片手で脚を持ってきて、軍中に抛り出す。天師が「さっさと行け!」と言うと、またも姜金定は逃げる。
 が、すぐに黄色い顔の力士が片手で頭、片手で脚を持ってきて、軍中に抛り出す。さすがに姜金定は疲れた様子である。天師がまたも「さっさと行け!」と言っても、姜金定は逃げないで、とうとう負けを認める。天師は梟首せず、姜金定に、国王の元に戻って南朝への降参を勧め、通行手形を出させるように言う。伝国の玉璽がないか尋ね、また、以前捕らえられた沙彦章を送り返すように言う。姜金丁は承知するが、伝国の玉璽のことは聞いたことがないと言う。





2017年4月25日火曜日

西洋記57

 次の夜も数百の頭だけの幽霊が出る。三宝太監は怒り、姜金定の頭を火で焼かせる。火の中で頭が、夜になったらまたやってくると言う。対策を考え、天師はみなに符を使わせる。その夜、婦人の頭の幽霊はあたりじゅうに現れる。

 翌日、天師は龍虎玄壇趙元帥を呼び出し、由来を聞く。頭には瞳がなく夜飛び回り朝には戻る。どうやら屍致魚であるらしい。これこそが羊角大仙の第三の錦嚢の計を姜金定が使ったのだ。

 その夜の三更、婦人の頭がまたやってくる。天師は五道の桃符を焼き、五個の黄巾力士を出して、体を遠くに離すか隠すかして頭が体のところにもどれなくしてしまうようにと言いつける。そして天師は大膽の姜維さえも驚くような雷を起こす。婦人の頭もおびえ、飛び去るが、体にはもどれず、翌朝、五個の黄巾力士が五串の頭を持ってくる。一串には百個以上の婦人の頭がついている。いずれにも瞳がない。

2017年4月21日金曜日

西洋記56

 また牛の陣がしかれ、姜金定が攻めてくる。天師が髪を解き、はだしで、剣を持ち、歩いて出る。姜金定の鞭の音で牛は押し寄せ、天師の雷で去る。また姜金定の鞭で押し寄せる。

 天師は負けをよそおって海に向かって逃げる。犀牛が追ってくる。天師は以前のように草龍にまたがって犀牛の後ろに回り、雷を響かせ、大風を吹かせ、朱色の頭黄色い尾、百の足のある蜈蚣に犀牛を襲わせる。犀牛は鼻に輪っかをつけられ、海に入ってしまう。そうとは知らず犀牛で勝利を得ようとした姜金定を天師は再び捕らえる。犀牛は本物で、安南国のものだという。

 姜金定の首を斬って哈密西関の上にかけさせ、骨を焼かせると、火の中に姜金定が現れるが頭がないので話ができない。死を納得できない様子である。

 その夜の三更、あたりに光が満ち、たくさんの夫人の頭が現れ、口々に冤罪を叫んだという。

2017年4月18日火曜日

西洋記55

 姜金定がまたしてもたくさんの水牛を連れて戦いに来る。

 以前のより大きく、背が高く、以前と違って角が二本ではなく一本で鼻の真ん中に生えていて、以前の水牛と違って毛ではなく鱗があり、走るのではなく飛んでいる、陸路ではなく山に登ったり海に入ったりしているという。天師が出陣することになる。

 天師は、髪を解き剣を取り、歩いて出陣する。野獣を率い、姜金定は馬に乗っている。天師はこの野獣が何であるかわからない。

 姜金定は一本の絲帶(リボン)を手に持ち、「長くなれ!」と言うと、絲帶は長くのび、鞭の音が響き、牛の群が天師に殺到する。天師が雷を落とすと牛は逃げ帰った。だが、姜金定がまた一鞭を響かせると、牛は再び陣に迫る。また雷で牛が陣に帰ったが、天師は分が悪いと海辺を走る。牛が後を追う。天師は草龍にまたがり、追ってくる牛に雷を落とすと、牛は水の中に入る。水中に雷を落とすと牛は岸に上がる。岸に雷を落とすとすぐに水中に入る。水中に雷を落とすとすぐに岸にいる。天師は打つ手がなく、草龍にまたがって去る。

 天師は中軍に帰り、三宝太監に報告する。
 また五十名に様子を探らせる。形は水牛のようだが、千斤の重さがあり、毛がなくて鱗のようにはげていて、蹄が三つ、角が一本鼻筋の上にあるというその様子から、天師は、犀牛ではないかと目星をつける。

2017年4月16日日曜日

西洋記54


 天師は元帥のもとにもどり、趙元帥の顛末を報告する。天師は五十名の兵士を借りて、水牛の由来を調べさせる。牛はもとは土地を耕していたのが野生化して増えたもので、牛は本物、乗っている子どもは姜金定があやつる偽物であった。特徴として、青いものを見ると追いかけるという。三宝太監は聞いて笑った。昨日の狼牙棒は青、天師の幡は青、趙元帥が着ているものは青だった。

 天師は今度は旗も馬もなしで髪を解き裸足になり剣を取り北斗を踏んで、真武のような姿で出て、姜金定にいどみ、牛を海におびき出し、雷を落として沈める。水面には無数の紙を切って作られた子どもがあった。
 さらに雷を落として野水牛を水葬にした後、天師は天将を呼んで姜金定を生けどりにし、元帥のいる中軍に連れて行かせる。姜金定は、残り二つの錦嚢の計も使っていないのに死ねないと言う。元帥は姜金定を放す。


『女仙外史』の訳本について

『女仙外史』のこれまでの訳本についてのメモ

◎『通俗大明女仙伝』江戸時代の和書 十二巻までで、未完

寛政1(1789)
著者 呂熊 [撰] 滄浪居主人(三宅嘯山、 1718-1801) [訳]

 『近世白話小説翻訳集』 (1985、汲古書院)に収められている。

 江戸時代の物なので、返り点をうっただけの部分、日本語に訳してある部分が入り交じる。かなはカタカナ。

 賛のついた浮世絵風の人物画がついている。
「建文帝」「唐賽児」「曼陀尼」「鮑道姑」「呂律」「劉越」「燕王」「姚廣孝」の八人。


◎幸田露伴「運命」

 翻訳ではないが、幸田露伴「運命」の作中に『女仙外史』の内容紹介がある。





『緑野仙踪』『綠野仙蹤』の日本語訳について

『緑野仙踪』『緑野仙蹤』のこれまでの日本語訳本についてのメモ。

◎「綠野の仙人」奥野信太郎訳「世界少年少女文学全集」に収められている。1956年、創元社
  作者名は不明とされている。

  児童向け抄訳。  大人向けのシーンはすべてカットされている。
  わずか115ページにまとめられているが、読みやすく、バランスの良い訳。

  主人公名は「冷于冰」  倭寇の大将は「夷目妙美(いもくみょうび)」

  仙人小説、仙術小説と呼んでいる。



 ◎『不老不死仙遊記』(上、下)山県初男、竹内克己 共訳 1933年、立命館出版
 作者名は 李百川 撰

  抄訳。  何分、戦前の本のため、旧字旧仮名遣い、またシーンによっては伏せ字が多い。

  前半、火龍真人に会って雷火珠をもらって別れるまではすべてカット。
  火龍真人と別れて旅に出たところから始まる。

  愛憎、妓楼などの大人向けシーンも入っているが、伏せ字が多い。

 670ページほどにまとめられている。
  主人公名「冷于氷」  倭寇の大将は「壱岐妙明(いきただあき)、伊集院妙明」とされている。

  底本の記載はないが、思うに、八十回本の抄訳かと思われる。

 『西遊記』を仏教小説、『緑野仙踪』を道教小説として有名だと紹介している。

2017年4月5日水曜日

『狐狸縁全伝』紙の本 発売!

 Kindle版に続いて、『狐狸縁全伝』の紙の本、(オンデマンド版、ペーパーバック)も発売になりました。  表紙のイラストもきれいに発色されていて、フォントも雰囲気に合っていて読みやすいです。  3年ちょっとの成果、どうぞよろしくお願い致します。  290ページ、2400円(本体価格)です。

2017年3月27日月曜日

『狐狸縁全伝』Kindle版発売

 実は『狐狸縁全伝』意外にも、現在手に入る邦訳がなかったことがわかったため、手をつけて、途中から介護も入って進められずに、ここ3年ちょっとかかっていたんですが、清明節までに何とかとがんばって、とりあえず、『狐狸縁全伝』Kindle版発売にこぎつけました。

 ヒロインは九尾の狐なのですが、 『封神演義』の妲己とはまたひと味違う。恋愛小説のヒロインとして、これまでの九尾の狐のイメージが変わること請け合いです。

 命がけの恋に始まり、コミカルな道士や、風格溢れる呂洞賓や、二郎神や哪吒が出て来ての大乱戦となり、と変化に富んだ、清代の神怪小説の佳作です。

 紙の本は4月発売です。


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