2017年5月3日水曜日

西洋記60

 宝母は、一つの美しい石で、毎月十五日の晩、これを海辺に置くと宝が集まってくるので宝母と言う。
 海鏡は中国の蚌蛤(ぼうこう、ハマグリ)に似ていて中に小さな赤い蟹がいる。海鏡が空腹になると蟹が外に出て食事をし、満腹して帰ると海鏡もまた満腹する。その殻が光を反射するので海鏡と言う。
 大火珠は直径一寸ほどの珠で、全体が火で、昼には香や紙に火をつけることができ(仮にこうしておく、原文燎香褻紙)、夜にこれを持っていれば前後を車千乗のところまで照らすことができるために大火珠と言う。
 澄水珠は、直径一寸ほどの美しい無傷の玉で、清水の中に入れると見えなくなり、濁った水の中に入れると水がたちまち澄むので澄水珠と言う。
 辟寒犀は犀牛の角で、金色で、金盤に乗せて広間の上に置いておけば暖気で暖かくなるので辟寒犀と言われるようになった。
 象牙の敷物は象牙を細い糸にして敷物に織ったもので、上で眠れば百病が除かれる。
 吉貝布の吉貝というのは柯樹(イタジイ)で、花期に細い緒を取って紡いで布にしたもので五色に染めるととても美しいので吉貝布と言う。
 奇南香は知っているが、白鶴香はという具合にすべての宝貝(ほうばい)についてたずねた後で、伝国の玉璽のことをたずねる。南朝の玉璽はこの国にはない、見つかったら隠さず返すと約束する。

 左丞相に続き、右丞相も黄金や白銀やさまざまな産物を献上する。
 元帥は産物や酒や文字や暦や刑罰や風習についてあれこれたずねる。
 記録させ、礼物を収め、宴会を開いた後、元帥は国王や丞相に、南朝の青磁や布などを贈り返す。
 翌日、国内をご案内しましょうと言われるが、元帥は、軍務中だからと断り、毎年進貢し、臣と称するように言う。
 論功行賞を行ってから、船を西に進める。

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