2014年4月22日火曜日

西洋記24

 張天師は目を閉じて息を整え元神を出し、死体のようになる。半晌もどらず、やがてもどり、揚州の瓊花観で瓊花を見てきたと言う。
 長老がなぜ遅くなったのかと問うと、偶然后土元君に会ったからだと言い、瓊花を持って帰ろうと思わなかったのかと長老がたずねると、元神だから見るだけでものは持ち帰れない。そう言うからには和尚はできるのかと逆に問われる。
 すると、長老はすでに張天師について瓊花を見てきたと言い、帽子から瓊花を取り出す。
 実は、長老はさっと行ってさっと帰っていたので人に気づかれなかったのだ。天師が揚洲まで行くのに時間がかかったのは長老が九環錫杖が道に横たえたため、毒龍に遭って進めず、長老が錫杖を収めたのでもどることができたのだ。

 敗れた天師だが、負けを認めたくはなかった。今度は杭州城の西湖に行き、天師は蓮の花を、長老は蓮根を持ち帰る。長老は天師が持ち帰った蓮の花の下の根だと言い、あわせてみるとその通り。百官はそっと笑い、天師は美しい花を得て帰り、逆に長老は根本を得たのだと言う。

 二人はもう一度神通力を比べるが、今度も長老のほうがすぐに帰り、張天師の帰りは遅い。王母の蟠桃会に行ってきたという天師、仙桃を出すと、長老も同じく仙桃を出す。今度も早かった長老の勝ち。天師は何故こうなったのか占って、長老の九環錫杖に邪魔されていたのだと知る。

 次の勝負で負けたほうが下山あるいは還俗という天師に対し、長老は、それでは軽すぎる、六陽首級を賭けろという。
 止めるのも聞かず、大勝負が始まり、張天師は準備をさせ、数百人規模の人を集めて術を使い始める。
 北西に黒雲が広がり始める。
 はたして、僧たちはどうなるのか?

西洋記23

第十二回 張天師単展家門 金碧峰両班賭勝

 度牒をとりあげ、辺境で従軍させるという張天師に、長老は何の力があって仏教を滅ぼそうとするのかと問う。
 張天師は、自らの道法、修練、丹砂などについて語り、宋に仁宗皇帝が作った賦をあげて、三教のうちで、ただ道教だけが尊いのだという。
 居丈高な張天師に対して、長老はボロ寺に住んで、貧しい身なりをしていますと謙遜しつつ、出神遊覽の術をご教示願いたいといい、二人は神通力を競うことになる。

2014年4月17日木曜日

西洋記22

 話した神は、土地神であった。背の低い老人の神・土地神たちが出迎えに現れる。長老は、すべてを帰す。すでに四更である。

 長老が九環錫杖を引いて門を離れると、街はにぎやかだが、托鉢をしても施主がいない。永楽帝が道教を重んじて僧門を滅ぼそうとしたためである。

 時は五更、天子は昇殿し、文武百官が朝廷に集まる。長老は歩いてむかう。
 黄門官と話をする。黄門官は午門の外に和尚が来ているがどうしたらいいかと処遇を問う。僧門をほろぼす命令を出したのに僧が来るとは神通力があるのではとあやしんだ天子により、長老は朝廷に招き入れられる。

 長老は、左の文官のほうでもなく、右の武官のほうでもない真ん中の道を歩き、天子に拝礼もしない。
 天子は怒り、首をはねさせようとする。それを一人の大臣が止め、長老の話を聞くことになる。
 長老は、三教九流はすべて陛下の子どもであるというのになぜ僧を滅ぼそうとするのかと天子に問い、天子は、張天師が上奏したからだと答える。
 そこへ張天師が現れる。張天師は僧がいるのに腹を立て、捕らえて礼部祠祭司に送らせようとする。

2014年4月16日水曜日

西洋記21

 白牡丹はといえば、純陽を得て身ごもり、子どもを産んだ。すぐれた子どもで、成長して官吏となり、句容県の知県から監察御史、兵部侍郎となり、もどって溧水県に住んだ。清廉潔白な白侍郎として知られた。
 白侍郎は、ある夜、鼠が二匹一組で卵を片方が腹にかかえてもう片方がそれを引いて運ぶのを見る。
 翌日、卵がなくなっていたため、卵を盗んだ罪で拷問がなされる。罪があるわけがないのに拷問で罪を認めるのを見た白侍郎は、自分は数十年禄を食んでいて、間違いをしていなかったわけもなく、こんなことでは民のためにならないと、柱に頭をぶつけて死ぬ。
 玉皇大帝は清官であった白侍郎を兜率宮の霊霄宝殿に呼び、玉皇の宴会を開いてもてなした。そして、溧水縣の城隍としたので、溧水縣の城隍神の姓は白だという。

2014年4月8日火曜日

西洋記20

第十一回 白城隍執掌溧水 張天師怒髮碧峰

 溧水縣城隍神に姓があるかないかという話になる。
 城隍菩薩は、漢の高祖から死んでも忠義を尽くすようにと天下すべての城隍に勅封された、どう天下が広がろうとひとつの天下、すべての城隍のほかに城隍はない、だから城隍にはみな自分と同じ姓があるという。
 もう一方の神は、溧水縣の城隍神の名前の由来を長く語る。

 八洞の神仙が西池王母の大宴に赴いたとき、七人はすぐに行ったが、呂純陽独りは雲に乗っていく間に歌声を耳にして南朝城の百花巷の花園で少女を見かける。
 歌につられて呂純陽は花園に降り、少女のもとに通うようになった。
 少女は白牡丹。七月初日、母と訪れた長乾寺の法師が邪気があると見咎め、対処法を教えてくれる。
 呂純陽の行いは採陰補陽のためであったのだが、白牡丹が左脇の下を押したため、丹田の宝を失うこととなってしまった。呂純陽は怒って飛剣で白牡丹に切りかかり、白牡丹は長乾寺の法師に助けを求める。
 長乾寺の法師は黄龍禅師で、飛剣をひと指しして地面に落とした。雄剣がもどらないので、雌剣を飛ばしたが、やはり指でひと指しされて右の壁にささってしまう。
 黄龍真人は、雲に乗って逃げる呂洞賓をつかまえ、二度と色欲に目をくらまさないと誓わされる。
 飛剣を返してくれと懇願すると、返したらまた人を傷つけようとするのではないかと、雄剣は山門にとどめて護法とし、雌剣だけを返すといわれる。そして、左右の腰に二本さしていた剣を、これからは背中に一本背負い、もし人を傷つけようとしたら剣はまず、項の上をすべるが、妖怪を斬るのであればいうことをきく、とされる。
 このときから、呂洞賓は剣を背負うようになった。
 また、丹田の宝を失い、西池王母の蟠桃大会に赴くことができなくなったのをどうしたらいいかご教示をと頼むと、龍江関で船を呼び、水路を百二十里進んで儀真県に行き、さらに船で七十里行って揚州府に、さらに船で百二十里行き高郵州に行く。高郵で陽の気を養えば、九年で功が成り、再び玉京にもどれるであろうと言われる。
 呂洞賓は礼を言ってむかった。そこが今に伝わる高郵州の洞賓養陽観の古跡である。

西洋記19

 大騒ぎとなる。
 五台山清涼寺の中にいた碧峰長老もこの騒ぎを知り、帝京である金陵(建業)に赴く。

 上清河雙廟の廟門に進む。
 風が吹いて、漢巾を戴き緑錦を着て玉帯を腰につけ、青竜刀を持った神が現れる。長老が問うと、十八位護教伽藍であるといい、玉泉山の顕聖の関将軍、つまり関羽とわかる。
 さらに風が吹き、日遊神、夜遊神、増福神、掠福神、糾察神、虚空過往神、さらに五人の五方掲諦神。長老はこれも「どうぞお帰りください、ご面倒をおかけするまでもございません」と帰す。
 さらに風が吹き、皂襆頭をかぶり、大紅袍をつけ、腰に黄金の帯,手に象牙の笏板という眉目秀麗、三分のひげのある神があらわれる。
 南京城の斬妖縛邪護呵真命皇帝の神といい、洪武帝を守っているという。
 三山街で薬を売っていた賀道人の話をする。昼は人、夜は鬼(幽霊)を治療していたという。
 城隍菩薩・姓を紀、名を信というとわかる。そこへさらに大紅袍を着た別の神が現れ、すべての城隍神に個別の姓があるかで言いあらそいになる。

(この前後、ざっくり大意でとっているが、白い馬は馬ではないを思わせる言い合いになっている)

西洋記18

 洞のみなは怒り、三茅山の祖師は金陵健康府に向かうが、眠っている天子の頭頂に現れた真身から天子が玄天大帝の臨凡であることを知って引き返す。

 朝になると朝廷が開かれる。
 遠路はるばる玉璽を取りにいかせるのに、左側にいた姚太師が、龍虎山の張真人を推薦する。張真人は、難題を押し付けられ、姚太師が僧家なので、僧家を滅ぼさずにおくものかと誓う。
 張真人は、南北両都十三省の和尚という和尚を滅ぼせば、西洋に赴いて玉璽を手に入れてくるという。
 すぐに天子が仏門を滅ぼすといい、和尚という和尚を七日以内に還俗させ、従わない者は一家もろとも斬、近隣四軒も隠せば遠方で軍役ということになる。

西洋記17

第十回 張天師興道滅僧 金碧峰南来救難

 三茅山の玉璽に刻まれていたのは、「九老仙都之印」の六文字であり、これでは天子の印として不適切。
「奉天承運之寶」の六文字に彫りなおさせることにする。
 だが、彫りなおさせて印面は「奉天承運之寶」になっても、印を押させてみると「九老仙都之印」と押される。
 何度試しても同じなので、天子は怒り、印に四十回の棒打ちを加える命令を出す。
 校尉五棍を八回換えて四十棍を加えると、生きていて夜になると四両の硃砂を食べて一度に千枚の紙に印を押すことのできた玉璽は硃砂を食べなくなり、一度の印では一枚の紙にしか押印できなくなり、命を失い、茅山に返される。

2014年4月6日日曜日

西洋記16

第九回 張天師金階面主 茅真君玉璽進朝

 進み出たのは、龍虎山の張真人であった。
 張真人は異民族が持ってきた宝貝(ほうばい)は至宝ではないという。

 張天師は、《資治通鑑》に載っている伝国の玉璽の話をする。西番に渡った玉璽が、献上された宝の中になかったという。
 玉璽はひとつの玉から三つに分けて作られ、残りのひとつは三茅山元符宮華陽洞正靈官のところに、もうひとつは自分の洞府にあるといい、その来歴を語る。

 天子は、玉璽を取り戻すために船団をしたてて取りに行かせることにする。

 張天師は、西洋の海道の険しさやそこにある国々を数えあげる。

1、金蓮宝象国
2、爪哇国
3、西洋女児国
4、蘇門答刺国
5、撒発国
6、溜山国
7、木葛蘭国
8、柯枝国
9、小葛蘭国
10、古俚国
11、金眼国
12、吸葛刺国
13、木骨都国
14、忽魯謨斯国
15、銀眼国
16、阿丹国
17、天方国
18、鄷都鬼国

 十八の大国があり、策士、軍師、将軍、あまたの兵士がおり、力を持った仙人や妖怪や僧なども数多くいるという。

 天子は、三茅山の玉璽を貢納させて代わりの玉璽にしようとする。