2016年4月29日金曜日

西洋記50

第三十回 羊角大仙帰天曹 羊角大仙錦嚢計

 元始天尊が第二弟子の魏化真人に庫を調べさせると、斬妖剣、軒轅鏡、吸魂瓶、引魂幡の四つの宝がぬすまれている事がわかる。
 また、八叉神鹿にまたがって、大徒弟の紫気真人が天門を離れたことがわかる。元始天尊は碧峰長老に聚宝筒を授けて帰す。

 ときの声を上げて羊角大仙がやってくるのに対して、碧峰長老が出る。
 羊角大仙が宝剣を使うと、長老が一指しして地に落とす。羊角大仙は怒って無底洞に花かごを持ってこさせ、軒轅鏡を取り出して長老を照らそうとする。長老は鉢で妨害する。羊角大仙は引魂幡を使おうとするが、これも長老の禅杖で邪魔される。
 長老が禅杖を使うと、杖は長大な毒蟒になって羊角大仙を縛ろうとする。羊角大仙は鹿の角をたたいて跳びだす。
 長老は鉢を使い、押しつぶそうとする。今度も羊角大仙は鹿で逃げる。
 長老は、吸魂瓶を持っていると言い、羊角大仙に、呼んだら答えるか、と持ちかける。長老は吸魂瓶を鉢の中に入れておいて、羊角道德真君と呼ぶ。羊角大仙が答えると鹿もろとも瓶の中に吸いこまれる。
 羊角大仙は瓶の底に穴を開けて外に出ようとしたが、長老の鉢がかぶせられているため穴を開けることができない。
 弱気になった羊角大仙の声を聞いて、長老は慈悲の気持ちを起こし、わざと鉢を開けて瓶だけにする。もう一度声をかけると、羊角大仙は瓶の外に出ていた。羊角大仙は一尺二寸の黄色い旗を長老のまわりでくるくる回す。長老は、わざを自由にさせたのに、恩に仇で報いるのかと言うが、石の井戸が目の前にあり、動かした九環の錫杖が当たる。
 長老が錫杖で敲くと、石の井戸は爆発し、二つに割れてしまう。


2016年4月25日月曜日

西洋記49

 羊角大仙のほうは、宝蓮宝象国に行き、番王、無底洞に迎えられる。姜金定、無底洞は師匠に従って哈密西関から討って出る。
 羊角大仙は宝剣を飛ばすが、碧峰長老に落とされる。鉄棍でうちかかったのも韋駄天尊に止められる。
 無底洞が小さな令字旗を使って碧峰長老を転ばせるが、碧峰長老は九環の錫杖を使って水囤で逃げる。無底洞の使った小さな令字旗は引魂幡であった。
 碧峰長老は金身を現して天界に向かい、東天門に着く。清風行者、明月道童が火雲宮に導き、碧峰長老は元始天尊に面会する。誰かが下界に降りていないか尋ね、吸魂瓶を見せると、火雲宮の宝元庫の吸魂瓶であることがわかる。誰がぬすんだのか調べることになる。


西洋記48 (三宝太監西洋記 抄訳)

第二十九回 長老私行羊角洞 長老直上東天門

 碧峰長老は羊角大仙に姿を変えて羊角山羊角洞を訪れ、吸魂瓶を騙りとる。
 宝船に帰った碧峰長老はこの吸魂瓶は偽物だという。
 碧峰長老は西方揭諦神を呼ぶ。西方揭諦神は、羊角大仙が宝船に来て、吸魂瓶を紙を切って作った偽物とすりかえていったと話す。
 羊角大仙は、本物か偽物かと問う有底洞に、出て行ってすぐにもどるようなら偽物で碧峰長老が化けたものだと教えて出かけるが、すぐに言い忘れたことがあるのに気づいて戻る。だが、有底洞は偽物の羊角大仙だと言って洞に入れない。羊角大仙は合図を教える。その合図の通りにしたら本物だと有底洞と打ちあわせる。
 碧峰長老が再度、羊角大仙に化けて羊角洞に向かったが、この合図をしなかったので見破られる。長老は、羊角山の山神から教えてもらい、羊角大仙が皮之和のところを朝晩訪ねていることを知り、皮之和の娘で六才の皮大姐に化けて羊角洞を訪れる。有底洞はつい、皮大姐に合図を教えてしまう。
 碧峰長老は、再び羊角大仙に化けて羊角洞を訪れ、合図をして本物だと思わせ、再度、吸魂瓶を騙りとる。

2016年4月23日土曜日

西洋記47

第二十八回 長老誤中吸魂瓶 破瓶走透金長老

 黒煙は火囤で、白気は水囤だと天師が見破る。
 またしても三人が戦いに来る。天師は免戦牌を出し、明日にするという。
 羊角大仙は、明日は金碧峰を出すようにと言って帰る。
 翌日、商議をする。碧峰長老はしぶったが、ついに出馬することになる。





 鄭和が回教徒であったことが書かれている。西番は砂漠地帯だと書かれている。

 独りで軽装で出る金碧峰のもとに東から神将が降りてきて国師を拝む。これは護法韋馱尊者であった。西からは白雲道長。金碧峰は自らの正体を隠して天機を漏らさないようにして欲しいと頼む。
 金碧峰がぶらぶらと進むと、羊角道德真君が出てくる。誰も連れず、旗も太鼓もなしで来たため、羊角は、相手を金碧峰では無いだろうと思い、無底洞に和尚を捕らえるように命じる。
 無底洞は指さされると動けなくなり、三頭四臂になる。碧峰は袖から小さな和尚を出し、無名鬼を退けるように命じる。
 小さな和尚は一尺二寸の鉄界尺を取り出し、無底洞を転ばせる。
 羊角大仙が宝剣を空中に投げ、「当たれ!」と叫ぶと、剣が長老に打ちかかるが、碧峰長老に落とされる。羊角大仙は軒轅鏡を使おうとしたが、長老が鉢で邪魔をしたので効果が無かった。
 羊角大仙は名前を呼んだら答えるように碧峰長老に求め、碧峰長老が応じる。
 名前を呼ばれて答えると、碧峰長老は羊角大仙が持つ瓶の中に吸い込まれた。
 羊角大仙はこの吸魂瓶の由来を語り、吸い込まれると、明日の昼三刻には溶けてしまうと話す。番王は喜んで宴を開いてもてなす。
 だが、翌日見ると瓶の底に小さな穴があいていて、碧峰長老は逃げてしまっていた。

2016年4月16日土曜日

西洋記46

第二十七回 二指揮雙敵行者 張天師三戦大仙

 羊角道德真君たちが金蓮宝象国に到着する。羊角道德真君は求められて無底洞に槍を与える。
 無底洞が出陣すると、南朝軍からは沙彦章が出陣する。
 無底洞が三頭四臂になると沙彦章は驚いて落馬、捕らえられる。
 次は、身長三尺の金天雷と身長一丈二尺の黄棟良の二将が出る。無底洞が敗れそうになったので羊角道德真君が満天に刀を飛ばして二人の馬を傷つけて追い返す。
 無底洞が三度目に戦いに来て、今度は張天師が出る。
 無底洞が火尖槍で突き、天師は七星宝剣をかかげて首を取ろうとするが、空中にいた羊角道德真君に剣をつかまれる。
 天師は草龍に乗って空にむかうが、羊角道德真君の軒轅鏡に映されて落ちる。姜金定の日月双刀と無底洞の三本の槍が待ちかまえているが、天師は簪を白龍に変えて海に逃げる。
 すぐにまた天師は出馬し、激しい戦いとなる。天師は飛符を焼いて天将を呼び、勝利する。
 翌日も激しい戦いは続く。羊角道德真君と張天師は分身の法を使って戦うが、なかなか勝負はつかない。
 羊角道德真君が軒轅鏡を使おうとしているのを見て、張天師は天将を呼んで勝利する。羊角道德真君は逃げ、姜金定と無底洞を捕らえる。だが、首を斬ると、二人は黒煙、白気となって逃げてしまう。


2016年4月9日土曜日

西洋記45

第二十六回 姜金定請下仙師 羊角仙計安前部

 姜金定のほうも戻り、番王に朝見し、張天師との戦いについて話す。
 ああでもないこうでもない、降参すべきか否かなどと言っていると、三太子が入ってくる。
 三太子は降参すべきではないと言う。
 姜金定は三太子に親征するように求める。また、師匠の羊角道德真君のことを話す。
 羊角道德真君に下山してもらうことになり、姜金定が羊角山に向かう。
 姜金定が泣いて頼み、羊角道德真君は下山することにする。だが、八百里の軟水洋、五百里の吸鐵嶺を越えてやってきた相手の技量がわからない。そこに、身長三尺の子どもの道士無底洞を見つける。無底洞は玉皇殿にむかい、そこで三杯の仙酒と三枚の青棗を口にする。眠りこけて目が覚めると全身がかゆいので、水浴びをしにいくと、身長三丈、三頭四臂、青い顔に牙が十二もあるという姿になった。
 羊角道德真君は無底洞を向かわせることにする。
 無底洞が山を下りていくと、金水河の水面に自分の死体が漂っていた。自分の色身だとわかる。無底洞が水浴びをすると、もとの無底洞の姿に戻った。
 羊角道德真君は無底洞に「師父」と大声で叫んで身をそらせば三頭四臂になれると教えるが、南朝の人馬を驚かせて馬から落とすだけで、殺してはならないといましめる。もし殺すと、自分の殺戒の心を傷つけ、自分の萬年の修煉を狂わせることになるという。
 宝を入れた花かご持ち、無底洞真人を連れて、羊角道德真君が下山する。

2016年4月8日金曜日

西洋記44

 天師はすぐに出馬する。左右に旗、楽舞生、道士を引き連れ、青鬃馬に乗って派手に出る。
 姜金定も相手に出る。
 姜金定が天師に四人の将軍がどこに行ったのか当ててみろという。
 天師は七星宝剣を揺らして火を出し、飛符を焼いて硃砂の香几を用意させ、令牌を三度たたいて天将を呼ぶと、赤い顔に細い目、蚕のような眉をした関元帥(関羽)が青龍偃月刀を持ち、赤兔胭脂馬に乗って現れる。天師に求められ、関元帥は四人の大将が石囤、水囤、木囤、火囤の四囤により、東、西、南、北の四方に閉じこめられていて、もし救わなければ、明日の昼三刻に溶けてしまうと教える。
 さらに天師が求めたので関元帥は雲に乗って飛んで行き、南で火囤を、東で木囤を、北で水囤を破るが、西に行くと石山があり、鞭でたたいても何をしても動かない。よく見ると、羊角山羊角道德真君の石の井戸であった。天地開闢前からあったこの宝は女媧がその一塊で天を補い、秦の始皇帝がその一塊で海を塞いだというほどのもの。羊角道徳真君は姜金定の師匠であったため、ここに借りられてきていたのだ。これは関元帥もどうにもできず、偃月刀を放り出して、手を伸ばし、武状元唐英を救い出して帰って行った。
 術を破られたと知って逃げようとする姜金定を天師が追うと、姜金定は一尺二寸の白い旗を取り出して天師を捕らえようとする。天師のほうも白旗を見て相手の術と思い、白煙になって逃げた。
 姜金定は日月双刀でうちかかり、天師が七星宝剣で受けてはげしく戦う。姜金定は自分では腕が及ばないと見て西に向かって逃げる。すると唐英が待ちかまえていたので、北に逃げると張柏、東に逃げると劉蔭、南に逃げると王良。姜金定は簪をとって地面に刺し、姿を消す。天師がそれを動けなくする。出て来た姜金定に天師が剣を下すと、今度は紅い羅を広げてその上に立ち、紅い雲にして飛びあがる。天師は草竜にまたがって追い、雲の上での戦いとなる。
 姜金定は片方の刀でさえぎり、家伝の九口の飛刀を取り出し、呪文を唱えて投げた。だが天師は百邪が避ける正一法門であり、九口の飛刀は四散してしまう。天師は飛符と焼いて天将を呼ぶ。姜金定は逃げ場をなくす。天師は九龍神帕を空中に投げる。これは太上老君が生まれたときの胞衣 (えな) で、天将でさえ逃げられないもの。姜金定は雲を降りて逃げる。
 一方、地面にいる四将は勝負の行方を知らない。
 そこに姜金定だけが降りてきたので、四人でとびかかって首をあげた。だが、鎧兜の中には幾杓かの清水があるだけだった。
 天師はその意味を知って天将に感謝し、下に降りた。
 天師はいぶかしんでいる将軍たちに姜金定が水囤によって逃げたのだと教え、みなは宝船に引き返す。

2016年4月7日木曜日

西洋記43

 追ってこない王良に対して、姜金定は再度戦いを挑んで負けをよそおって誘うが、やはり王良は追ってこない。
 三度目に相手になるとき、姜金定は王良が負けて逃げるなら自分は必ず追いかけると言う。


第二十五回 張天師計擒金定 姜金定水囤逃生

 王良は逃げ、丈八の神槍を引き、姜金定が追いかけてくると身をひねって姜金定を槍で攻撃する。よけきれず、姜金定のそでが切れる。そでが切られたところから、小さな紅い旗が現れたかと思うと、大きな音があがり、王良は馬とともに十数丈もの深い穴の中に落ちていた。上には紅い光が照らしていて、火炎があがっていて逃げ場はない。
 勝利した姜金定が再び、戦いに来た。二人の元帥は武状元唐英、狼牙棒張柏、銅鈴眼劉蔭、應襲王良という四人もの将軍を破られ、免戦牌を出し、対策を考える。

 支援を求めて天師のところに行く。
 そこに並んでいる天将の象は、ことごとく三頭六臂、青い顔に牙が突きだし、朱い鬚、深い赤色の髪をしていた。なぜ神であるのにこのように醜い形をしているのかと馬太監が問うと、天師は、古人は獣面人心で神となったのに、今の人はみな人面獣心のために神になれず輪廻の輪に落ちるのだと言う。
 また、机の下に大きな枷があるのを見て不審がる。
 これに対して天師は、左の枷はさまざまな狂神悪鬼を、右の枷はさまざまな鬼怪妖精をつなぐためのものだと言う。
 捕らえられる鬼神や妖怪の名前として、

急脚神、遊手神、遊食神、大頭鬼、靛面鬼、楊梅鬼
雞精、狗精、猪精、驢精、馬精、騾子精、門拴精、掃箒精、扁檐精、馬子精

といったものが挙げられている。

 馬公は天師に出馬を請う。