2017年5月16日火曜日

西洋記61

 すると突然知らせが入り、金蓮宝象国の三太子が父王が南朝に降参したのを怨み、兵をひきいて逃げたという。

 また進むと、海岸を駆けてくる一騎があり、金蓮宝象国の国王がこの先の小国・賓童国に、宝船が行ったら降参するように伝えたと知らせてきた。

 夜になって碇を下ろすと、夜半、左軍で人馬の物音がし、ときの声が上がる。左軍の征西副都督黄全彦がよろいを着けて現れ、賊船が来たと報告する。これは金蓮宝象国の三太子が三十名あまりで海賊となったものであった。
 鄭和が道理を説いて説きふせ、降参させる。

 しばらく行くと芝の生えた山があったので、芝を取りに行かせる。この山は頂上に滝があり、そこに石碑がある。石碑に書かれた言葉から、霊山と呼ばれている。
 元帥はあたりのことをたずね、また船を進める。

 5、6日進むと、山のふもとに着き、さらに一日行くとひとつの国に着いた。
 そこは賓童龍国で、国王が降参書を持ってきて、労なく降参させ、竜眼杯、鳳尾の扇、珊瑚の枕、奇南香といった宝物を手に入れる。

2017年5月3日水曜日

西洋記60

 宝母は、一つの美しい石で、毎月十五日の晩、これを海辺に置くと宝が集まってくるので宝母と言う。
 海鏡は中国の蚌蛤(ぼうこう、ハマグリ)に似ていて中に小さな赤い蟹がいる。海鏡が空腹になると蟹が外に出て食事をし、満腹して帰ると海鏡もまた満腹する。その殻が光を反射するので海鏡と言う。
 大火珠は直径一寸ほどの珠で、全体が火で、昼には香や紙に火をつけることができ(仮にこうしておく、原文燎香褻紙)、夜にこれを持っていれば前後を車千乗のところまで照らすことができるために大火珠と言う。
 澄水珠は、直径一寸ほどの美しい無傷の玉で、清水の中に入れると見えなくなり、濁った水の中に入れると水がたちまち澄むので澄水珠と言う。
 辟寒犀は犀牛の角で、金色で、金盤に乗せて広間の上に置いておけば暖気で暖かくなるので辟寒犀と言われるようになった。
 象牙の敷物は象牙を細い糸にして敷物に織ったもので、上で眠れば百病が除かれる。
 吉貝布の吉貝というのは柯樹(イタジイ)で、花期に細い緒を取って紡いで布にしたもので五色に染めるととても美しいので吉貝布と言う。
 奇南香は知っているが、白鶴香はという具合にすべての宝貝(ほうばい)についてたずねた後で、伝国の玉璽のことをたずねる。南朝の玉璽はこの国にはない、見つかったら隠さず返すと約束する。

 左丞相に続き、右丞相も黄金や白銀やさまざまな産物を献上する。
 元帥は産物や酒や文字や暦や刑罰や風習についてあれこれたずねる。
 記録させ、礼物を収め、宴会を開いた後、元帥は国王や丞相に、南朝の青磁や布などを贈り返す。
 翌日、国内をご案内しましょうと言われるが、元帥は、軍務中だからと断り、毎年進貢し、臣と称するように言う。
 論功行賞を行ってから、船を西に進める。

2017年5月1日月曜日

西洋記59

 姜金定はあわててもどり、国王に目通りする。姜金定はとうていかなわないので降伏するように進言する。左右の丞相は降書とともに宝貝(宝物)を進貢するべきだと言う。先に姜金定が沙彦章を送って行く。三宝太監が、沙彦章を叱咤し、後の功績で贖罪せよと言っていると、金蓮宝象国の左右の丞相が降参しに来る。降参書とともに宝貝の目録がある。

 載っていたのは、

 宝母一枚、海鏡一双、大火珠四枚、澄水珠十枚、辟寒犀二根、象牙の敷物二牀、吉貝布十匹、奇南香一箱、白鶴香一箱、千步草一箱、雞舌香一盤、海棗一盤、といった宝物であった。

 三宝太監は宝貝の目録を見て喜び、丞相に、これは本国の物かと尋ねる。丞相は本国の物だと答え、三宝太監はそのいちいちについて説明を求める。