2017年4月26日水曜日

西洋記58

第三十二回 金蓮宝象国服降 賓童龍国王納款

 張天師は五個の黄巾力士に頭を海の遠くに捨てさせる一方、姜金定を生けどりにする策を講じる。。
 姜金定が現れ、頭を探しに追いかけるのが報告され、天師が出馬、符を飛ばし、天将が姜金定を捉える。今度も、姜金丁は心服しないので、また放す。

 姜金定が去ってしばらくすると、赤い顔の力士が片手で頭、片手で脚を持ってきて、軍中に抛り出す。天師が「さっさと行け!」と言うと、またも姜金定は逃げる。
 が、すぐに青い顔の力士が片手で頭、片手で脚を持ってきて、軍中に抛り出す。天師が「さっさと行け!」と言うと、またも姜金定は逃げる。
 が、すぐに黒い顔の力士が片手で頭、片手で脚を持ってきて、軍中に抛り出す。天師が「さっさと行け!」と言うと、またも姜金定は逃げる。
 が、すぐに白い顔の力士が片手で頭、片手で脚を持ってきて、軍中に抛り出す。天師が「さっさと行け!」と言うと、またも姜金定は逃げる。
 が、すぐに黄色い顔の力士が片手で頭、片手で脚を持ってきて、軍中に抛り出す。さすがに姜金定は疲れた様子である。天師がまたも「さっさと行け!」と言っても、姜金定は逃げないで、とうとう負けを認める。天師は梟首せず、姜金定に、国王の元に戻って南朝への降参を勧め、通行手形を出させるように言う。伝国の玉璽がないか尋ね、また、以前捕らえられた沙彦章を送り返すように言う。姜金丁は承知するが、伝国の玉璽のことは聞いたことがないと言う。





2017年4月25日火曜日

西洋記57

 次の夜も数百の頭だけの幽霊が出る。三宝太監は怒り、姜金定の頭を火で焼かせる。火の中で頭が、夜になったらまたやってくると言う。対策を考え、天師はみなに符を使わせる。その夜、婦人の頭の幽霊はあたりじゅうに現れる。

 翌日、天師は龍虎玄壇趙元帥を呼び出し、由来を聞く。頭には瞳がなく夜飛び回り朝には戻る。どうやら屍致魚であるらしい。これこそが羊角大仙の第三の錦嚢の計を姜金定が使ったのだ。

 その夜の三更、婦人の頭がまたやってくる。天師は五道の桃符を焼き、五個の黄巾力士を出して、体を遠くに離すか隠すかして頭が体のところにもどれなくしてしまうようにと言いつける。そして天師は大膽の姜維さえも驚くような雷を起こす。婦人の頭もおびえ、飛び去るが、体にはもどれず、翌朝、五個の黄巾力士が五串の頭を持ってくる。一串には百個以上の婦人の頭がついている。いずれにも瞳がない。

2017年4月21日金曜日

西洋記56

 また牛の陣がしかれ、姜金定が攻めてくる。天師が髪を解き、はだしで、剣を持ち、歩いて出る。姜金定の鞭の音で牛は押し寄せ、天師の雷で去る。また姜金定の鞭で押し寄せる。

 天師は負けをよそおって海に向かって逃げる。犀牛が追ってくる。天師は以前のように草龍にまたがって犀牛の後ろに回り、雷を響かせ、大風を吹かせ、朱色の頭黄色い尾、百の足のある蜈蚣に犀牛を襲わせる。犀牛は鼻に輪っかをつけられ、海に入ってしまう。そうとは知らず犀牛で勝利を得ようとした姜金定を天師は再び捕らえる。犀牛は本物で、安南国のものだという。

 姜金定の首を斬って哈密西関の上にかけさせ、骨を焼かせると、火の中に姜金定が現れるが頭がないので話ができない。死を納得できない様子である。

 その夜の三更、あたりに光が満ち、たくさんの夫人の頭が現れ、口々に冤罪を叫んだという。

2017年4月18日火曜日

西洋記55

 姜金定がまたしてもたくさんの水牛を連れて戦いに来る。

 以前のより大きく、背が高く、以前と違って角が二本ではなく一本で鼻の真ん中に生えていて、以前の水牛と違って毛ではなく鱗があり、走るのではなく飛んでいる、陸路ではなく山に登ったり海に入ったりしているという。天師が出陣することになる。

 天師は、髪を解き剣を取り、歩いて出陣する。野獣を率い、姜金定は馬に乗っている。天師はこの野獣が何であるかわからない。

 姜金定は一本の絲帶(リボン)を手に持ち、「長くなれ!」と言うと、絲帶は長くのび、鞭の音が響き、牛の群が天師に殺到する。天師が雷を落とすと牛は逃げ帰った。だが、姜金定がまた一鞭を響かせると、牛は再び陣に迫る。また雷で牛が陣に帰ったが、天師は分が悪いと海辺を走る。牛が後を追う。天師は草龍にまたがり、追ってくる牛に雷を落とすと、牛は水の中に入る。水中に雷を落とすと牛は岸に上がる。岸に雷を落とすとすぐに水中に入る。水中に雷を落とすとすぐに岸にいる。天師は打つ手がなく、草龍にまたがって去る。

 天師は中軍に帰り、三宝太監に報告する。
 また五十名に様子を探らせる。形は水牛のようだが、千斤の重さがあり、毛がなくて鱗のようにはげていて、蹄が三つ、角が一本鼻筋の上にあるというその様子から、天師は、犀牛ではないかと目星をつける。

2017年4月16日日曜日

西洋記54


 天師は元帥のもとにもどり、趙元帥の顛末を報告する。天師は五十名の兵士を借りて、水牛の由来を調べさせる。牛はもとは土地を耕していたのが野生化して増えたもので、牛は本物、乗っている子どもは姜金定があやつる偽物であった。特徴として、青いものを見ると追いかけるという。三宝太監は聞いて笑った。昨日の狼牙棒は青、天師の幡は青、趙元帥が着ているものは青だった。

 天師は今度は旗も馬もなしで髪を解き裸足になり剣を取り北斗を踏んで、真武のような姿で出て、姜金定にいどみ、牛を海におびき出し、雷を落として沈める。水面には無数の紙を切って作られた子どもがあった。
 さらに雷を落として野水牛を水葬にした後、天師は天将を呼んで姜金定を生けどりにし、元帥のいる中軍に連れて行かせる。姜金定は、残り二つの錦嚢の計も使っていないのに死ねないと言う。元帥は姜金定を放す。


『女仙外史』の訳本について

『女仙外史』のこれまでの訳本についてのメモ

◎『通俗大明女仙伝』江戸時代の和書 十二巻までで、未完

寛政1(1789)
著者 呂熊 [撰] 滄浪居主人(三宅嘯山、 1718-1801) [訳]

 『近世白話小説翻訳集』 (1985、汲古書院)に収められている。

 江戸時代の物なので、返り点をうっただけの部分、日本語に訳してある部分が入り交じる。かなはカタカナ。

 賛のついた浮世絵風の人物画がついている。
「建文帝」「唐賽児」「曼陀尼」「鮑道姑」「呂律」「劉越」「燕王」「姚廣孝」の八人。


◎幸田露伴「運命」

 翻訳ではないが、幸田露伴「運命」の作中に『女仙外史』の内容紹介がある。





『緑野仙踪』『綠野仙蹤』の日本語訳について

『緑野仙踪』『緑野仙蹤』のこれまでの日本語訳本についてのメモ。

◎「綠野の仙人」奥野信太郎訳「世界少年少女文学全集」に収められている。1956年、創元社
  作者名は不明とされている。

  児童向け抄訳。  大人向けのシーンはすべてカットされている。
  わずか115ページにまとめられているが、読みやすく、バランスの良い訳。

  主人公名は「冷于冰」  倭寇の大将は「夷目妙美(いもくみょうび)」

  仙人小説、仙術小説と呼んでいる。



 ◎『不老不死仙遊記』(上、下)山県初男、竹内克己 共訳 1933年、立命館出版
 作者名は 李百川 撰

  抄訳。  何分、戦前の本のため、旧字旧仮名遣い、またシーンによっては伏せ字が多い。

  前半、火龍真人に会って雷火珠をもらって別れるまではすべてカット。
  火龍真人と別れて旅に出たところから始まる。

  愛憎、妓楼などの大人向けシーンも入っているが、伏せ字が多い。

 670ページほどにまとめられている。
  主人公名「冷于氷」  倭寇の大将は「壱岐妙明(いきただあき)、伊集院妙明」とされている。

  底本の記載はないが、思うに、八十回本の抄訳かと思われる。

 『西遊記』を仏教小説、『緑野仙踪』を道教小説として有名だと紹介している。

2017年4月5日水曜日

『狐狸縁全伝』紙の本 発売!

 Kindle版に続いて、『狐狸縁全伝』の紙の本、(オンデマンド版、ペーパーバック)も発売になりました。  表紙のイラストもきれいに発色されていて、フォントも雰囲気に合っていて読みやすいです。  3年ちょっとの成果、どうぞよろしくお願い致します。  290ページ、2400円(本体価格)です。