2016年4月8日金曜日

西洋記44

 天師はすぐに出馬する。左右に旗、楽舞生、道士を引き連れ、青鬃馬に乗って派手に出る。
 姜金定も相手に出る。
 姜金定が天師に四人の将軍がどこに行ったのか当ててみろという。
 天師は七星宝剣を揺らして火を出し、飛符を焼いて硃砂の香几を用意させ、令牌を三度たたいて天将を呼ぶと、赤い顔に細い目、蚕のような眉をした関元帥(関羽)が青龍偃月刀を持ち、赤兔胭脂馬に乗って現れる。天師に求められ、関元帥は四人の大将が石囤、水囤、木囤、火囤の四囤により、東、西、南、北の四方に閉じこめられていて、もし救わなければ、明日の昼三刻に溶けてしまうと教える。
 さらに天師が求めたので関元帥は雲に乗って飛んで行き、南で火囤を、東で木囤を、北で水囤を破るが、西に行くと石山があり、鞭でたたいても何をしても動かない。よく見ると、羊角山羊角道德真君の石の井戸であった。天地開闢前からあったこの宝は女媧がその一塊で天を補い、秦の始皇帝がその一塊で海を塞いだというほどのもの。羊角道徳真君は姜金定の師匠であったため、ここに借りられてきていたのだ。これは関元帥もどうにもできず、偃月刀を放り出して、手を伸ばし、武状元唐英を救い出して帰って行った。
 術を破られたと知って逃げようとする姜金定を天師が追うと、姜金定は一尺二寸の白い旗を取り出して天師を捕らえようとする。天師のほうも白旗を見て相手の術と思い、白煙になって逃げた。
 姜金定は日月双刀でうちかかり、天師が七星宝剣で受けてはげしく戦う。姜金定は自分では腕が及ばないと見て西に向かって逃げる。すると唐英が待ちかまえていたので、北に逃げると張柏、東に逃げると劉蔭、南に逃げると王良。姜金定は簪をとって地面に刺し、姿を消す。天師がそれを動けなくする。出て来た姜金定に天師が剣を下すと、今度は紅い羅を広げてその上に立ち、紅い雲にして飛びあがる。天師は草竜にまたがって追い、雲の上での戦いとなる。
 姜金定は片方の刀でさえぎり、家伝の九口の飛刀を取り出し、呪文を唱えて投げた。だが天師は百邪が避ける正一法門であり、九口の飛刀は四散してしまう。天師は飛符と焼いて天将を呼ぶ。姜金定は逃げ場をなくす。天師は九龍神帕を空中に投げる。これは太上老君が生まれたときの胞衣 (えな) で、天将でさえ逃げられないもの。姜金定は雲を降りて逃げる。
 一方、地面にいる四将は勝負の行方を知らない。
 そこに姜金定だけが降りてきたので、四人でとびかかって首をあげた。だが、鎧兜の中には幾杓かの清水があるだけだった。
 天師はその意味を知って天将に感謝し、下に降りた。
 天師はいぶかしんでいる将軍たちに姜金定が水囤によって逃げたのだと教え、みなは宝船に引き返す。

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