2015年7月3日金曜日

西洋記31

第十九回 白鱔精鬧紅江口 白龍精吵白龍江

 張天師が術を使い、書いた符を船の下に投げると、水の中から年寄りが現れる。背が低く、こもを背に、口を大きく開け、飛符を飲んでしまう。その姓は「沙」。
 次の霊官符は禿げた白い顔の書生が袖にしまってしまう。その姓は「白」。
 次の黒煞符は水中から現れた乞食が食べてしまう。大頭鬼であった。その姓は「口天の呉」。
 符が効果がないのを三宝太監が笑う。

 張天師はさらに雷公符を書いて船首の下に投げさせる。今度は老女が現れて符を空中に吹き飛ばす。その姓は「朱」。
 次は急脚符。これは鬚があるのと角があるのの二人の老人、さらに老人が現れて消してしまう。姓名は答えず、「不消你左符右符,酒兒要幾壺;左問右問,豬頭羊肉要幾頓。」と言った事から、天師がこれは酒食を要求しているのだという。国師に頼んだらという三宝太監に対して、張天師は自分に課された事だから自分ですると言う。

 張天師は髪をふりみだし、北斗を踏み、呪文を唱え、符を焼き、令牌を三度敲いて叫ぶ。
「一擊天門開,二擊地戸裂,三擊天神赴壇!」

 すると、紅江口の鎮守の黒風大王が現れる。
 黒風大王は十匹の妖怪が邪魔をしていると言う。
 先ほどの十人の正体は、それぞれ河豚、ヒトデ、蝦、鲨魚、白鱔(鰻)、呑舟魚、猪婆龍、赤蛟、蒼龍、白鱔であると明かす。

 天師が豚や羊を殺し、祭りをとりおこなうと妖怪たちは喜んで去るが、白鱔だけは去らずに頭を左右に揺すっている。天師が、戻ったら「紅江口白鱔大王」として祀るとなだめると、白鱔は去る。

 波は静まり、宝船は進めるようになる。

0 件のコメント:

コメントを投稿