2021年1月28日木曜日

緑野仙踪メモ1

『緑野仙踪』

 八十回または百回。長い。
 清代の神怪小説は、明代のものと違い、社会描写が強くなっている。

  戦前の抄訳である、山県初男、竹内克己 共訳『不老不死仙遊記』(1933年、立命館出版)を読んでいればわかると思うが、世情を描き出す筆から、『金瓶梅』と比較されることもある、かなり大人向け部分のある作品である。

 児童向けの翻訳である、奥野信太郎訳「緑野の仙人」(1956年、東京創元社「世界少年少女文学全集 東洋編」収載)で読んだ人は、全貌を知ったら、びっくりするかもしれない。

  百回本は、特に、描写が詳細なため、手書き抄本しか残っていない。

 八十回本は、出版された本が残っている。また、現在流通している刊本の多くは八十回本をもとにしており、百回本をもとにした刊本も、『金瓶梅』同様、問題になる部分を削除してある。

 百回の手書き抄本の影印は古本小説叢刊に収められているものなどがある。

 百回影印本では、主人公は「冷于氷」、倭寇の大将は「夷目妙美」となっている。

 出世の道を断たれた主人公が仙人を目指し、火龍真人から秘法を授けられ、各地をめぐって妖怪を退治したり、弟子を取ったり、人助けをしたり、戦争にかかわったり、貪官汚吏をこらしめたり、と修練していく。そのあちこちでの師弟や人々との関わりなどから、世のありさまが詳細に描き出されていく。


 

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